アマチュア無線と非常通信

マチュア無線の日頃の自己訓練・実験・研究がボランティアとして社会に貢献できるものに事故や災害時の非常通信があります。

最近は携帯電話の著しい普及で交通事故等での無線の必要性は低くなりました。それに今まで携帯電話の圏外であった山岳地帯にも中継アンテナが設置される傾向にあり、実際に山の遭難で携帯電話で救助されたケースも出てきました。しかし、まだまだ山岳地帯では無線が連絡手段として重要です。今でも年間数件は山の遭難でアマチュア無線で救助されるケースが報告されています。

阪神・淡路大震災では一般電話や携帯電話が壊滅状態のなかでアマチュア無線が非常通信の手段として大活躍しました。この大震災を契機に全国の各自治体がアマチュア無線の有効性に注目し、アマチュア無線局と非常通信の協定を結ぶケースが増えてきました。

非常通信に限っては特例として免許がなくても無線機の操作を行うことが許されています。しかし無線機の操作方法や周波数、電波伝搬の特性などある程度の専門知識が必要です。だから日頃から無線通信の訓練をしているアマチュア無線家の存在が重要になるのです。


非常通信の方法
通信方法
例えば7L4CWLが無線電話により非常通信を行うため「CQ呼出し」を行う場合は・・・

 非常 非常 非常 CQ(3回) こちらはJD2HYKどうぞ

と送信します。これを受信したJA1ABCが応答する場合は・・・
 非常 非常 非常 JD2HYK(3回くらい繰り返す)  こちらはJA1ABC(3回くらい繰り返す) どうぞ

と送信します。

コンタクトがとれた場合は非常通信の内容や場所等を簡潔に伝え関係方面への連絡を依頼します。
いつ、どこで、誰が、どのような状態かを慌てず正確かつ冷静に伝えることが重要です。

無線交信の仕方
@電源を入れる。
ACall ボタンを押し、コールチャンネル(145.00Mz)となっているか確認。
B送信出力をH(最大)に設定。
CPTT ボタンを押しながら以下を送信。
「非常・非常・非常。山岳遭難です」
「こちらのコールは JN1YTI(ジュリエット、ナンシー、ワン、ヤンキー、タンゴ、インディア)」
「(山域名)移動」
「どなたか、最寄りの局で電話連絡が可能な方は応答願います。どうぞ」
以上を繰り返す。
応答があった時
できるだけローパワーにする。送信は手短に!!
@相手のコールチャンネルをメモ。
A空きチャンネルを探すまたは、依頼する。
B空きチャンネルを双方で確認(口頭)。
CBのチャンネルへ移動。
D移動完了を双方で確認。
E相手局の名前、場所、電話番号をメモ。
F連絡内容を伝達。
連絡書に沿って、1項目づつ確認を取りながら行う。
地元警察、所属山岳会の優先順位で連絡の依頼。
G今後の連絡スケジュール、待ち受け周波数の協議・確認。
応答がない時
@Call ボタンを解除して、VFO つまみを回し使用しているチャンネルを見つける。
A話しの合間をねらって「ブレイク!!」といい、割り込む。
B上記の「非常・非常・非常」以下のように応答する。
誰も応答しなくても、誰かが聞いているかもしれないので情報はできるだけ流す。
電池が切れていないか確認する。
交信終了時は忘れずに電気を切る。
混信のトラブル
混信で通話不能になった場合、コールチャンネルに戻って待機。再度呼び出す。
1.6.2 無線による連絡
■アマチュア無線による連絡
@電源を入れる。
ACall ボタンを押し、コールチャンネル(145.00Mz)に設定。
B送信出力をH(最大)に設定。
CPTT ボタンを押しながら以下を送信。
「非常・非常・非常。山岳遭難です」
「こちらは JN1YTI」
(ジュリエット、ナンシー、ワン、ヤンキー、タンゴ、インディア)
「(山域名)移動」
「どなたか、最寄りの局で電話連絡が可能な方は応答願います。
「どうぞ。」
以上を繰り返す。
応答があった時
送信は多くの電力を使用するので、できるだけローパワーにする。
送信は要領よく手短に!
@相手のコールチャンネルをメモ。
A空きチャンネルを探すまたは、依頼する。
B空きチャンネルを双方で確認(口頭)し、
そのチャンネルへ移動。
D移動完了を双方で確認。
E相手局の名前、場所、電話番号をメモ。
F連絡内容を伝達。
連絡書に沿って、1項目づつ確認を取りながら行う。
地元警察、所属山岳会の優先順位で連絡の依頼。
G相手局に受信内容を復唱してもらい、誤りがない事を確認する。
G今後の連絡スケジュール、待ち受け周波数の協議・確認。
応答がない時
@ Call ボタンを解除して、VFO つまみを回し使用している
チャンネルを見つける。
A話しの合間をねらって「ブレイク!!」といい、割り込む。
B上記の「非常・非常・非常」以下のように応答する。
応答がなくても、誰かが聞いている場合もあるので情報はできるだけ流す。
電池が切れていないか確認する。
交信終了時は忘れずに電気を切る。
混信のトラブル
混信で通話不能になった場合、コールチャンネルに戻って待機。
再度呼び出す。



非常通信周波数
バンドプラン(周波数の使用区別)で3.5MHz〜1200MHzバンド内にJARLが非常用周波数と電波型式を定めています。
もちろん交信相手が見つかれば、バンドプランに従ってどの周波数を利用してもよいのです。

利用者が多い145.00又は433.00の呼出周波数が応答の確率が高いでしょう。何度呼んでも応答がない場合は、周波数帯をワッチ(チャンネルを回す)して交信中の局に割り込むという方法もあります。
交信中の局を見つけたら、送信から受信に移るタイミングに合わせて「ブレーク」と宣言します。
ブレークとは「送信を中断せよ」という命令です。その声が相手に届いていれば「ブレーク局どうぞ」と言いますから、非常事態が発生したことを説明してください。
 
非常通信周波数
バンド 電波の形式 周波数
4630KHz CW  4630KHz (非常通信専用)※1
3.5MHz CW、AM、SSB系  3,525±5kHz
7MHz CW、AM、SSB系  7,030±5kHz
14MHz CW、AM、SSB系  14,100±10kHz
21MHz CW、AM、SSB系  21,200±10kHz
28MHz CW、AM、SSB系  28,200±10kHz
50MHz CW、AM、SSB系
FM系
FM系
 50.10MHz
 51.00MHz
(呼出周波数共用)※2
 51.50MHz
144MHz CW、AM、SSB系
FM系
FM系
 144.10MHz
 145.00MHz
(呼出周波数共用)※2
 145.50MHz
430MHz CW、AM、SSB系
FM系
FM系
 430.10MHz
 433.00MHz
(呼出周波数共用)※2
 433.50MHz
1200MHz CW、AM、SSB系
FM系
 1294.00MHz
 1295.00MHz
(呼出周波数共用)※2
FM系ではモールス通信(F2)も可
※1 4630KHzは、非常通信連絡設定専用で、警察庁・自衛隊・海上保安庁等の行政機関と直接交信が可能
※2
 FM系で呼出周波数と共用の非常通信周波数は、呼出しと応答の連絡設定に限られており非常通信を継続する場合はFM区分内の他の周波数に変更しなければならない。

非常通信の注意点

非常通信の要件(条件)
非常通信は次の3つの要件が同時に満たされる場合の無線通信です。(法52条4号)

1.地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、また発生するおそれがあること。
2.有線通信を利用することができないか、またはこれを利用することが著しく困難であること。
3.人命の救助、災害の救援、交通通信の確保または秩序の維持のために行われること。

他の者は傍受し通信を妨害してはならない。
通信相手が見つかってお互いに交信中は他の者は黙ってワッチしなければなりません。法的にもそう決められています。協力したい気持ちから、横から色々な情報を入れると通信が混乱し通報が遅れます。また、依頼されたわけでもないのに、傍受した内容を自分勝手な判断で警察や消防に連絡すると情報が混乱します。実はこのようなケースが最も多く、情報が錯綜して一つの事案が複数になったり、一つの現場に救助隊が重複することがよくあります。決してお節介はしないことです。
呼出周波数で非常通信を継続してはならない。
FMの呼出周波数は非常通信周波数と共用になっています。呼出周波数での非常通信は呼出しと応答の連絡設定に限られており非常通信を継続する場合はFM区分内の他の周波数に変更しなければなりません。つまり、非常通信だからといって呼出周波数を継続して使用してはならないのです。

理由は混信になるからです。
呼出周波数は他の呼出しにも使用されますし、他の非常通信が重なる場合もあります。特に大規模災害では同時に多数の非常通信が発生します。情報混乱の原因にもなるので交信相手が見つかったら速やかに他の周波数に変更しなければなりません。特に山頂から呼出周波数を独占すると、広範囲ですべての呼出がストップしてしまいます。

非常通信周波数が呼出周波数と共用になっているのはあくまでもワッチしている人が多いからです。
呼出周波数以外の
非常通信周波数はそのまま継続して使用してかまいません。

非常通信周波数で通常の交信をしてもよいか?
呼出周波数以外の非常通信周波数は非常通信が行われていないときはその他の交信に利用することができます
。ただし、いつ非常通信が行われるかわからないので利用する際は非常通信周波数であることを念頭に入れた運用を心がけるべきです。ダラダラ通信やブレークインタイムを開けないなどは問題です。
他に周波数が空いているのにわざわざ非常通信周波数を使う必要はないと思いますが、非常通信周波数だということを知らないで使っている人が多いようです。バンドプランは常に頭に入れておきましょう。
特にFMの145.50MHzや433.50MHzは、非常通信周波数だと知らないで使っている人が多いようですので要注意です。
非常通信は自己責任で!
アマチュア無線の非常通信はそれを行うかどうかは免許人の自主的判断であり、決して義務付けられているわけではありません。
したがって、非常通信に要した費用は自己負担ですし、非常通信中に負傷したり死亡しても誰も補償してくれません。
あくまでもボランティアですので危険をおかしてまで行う必要はありません。

ただし、電波法74条に基づいて
総務大臣の要請によって非常通信を行った場合は、それに要した費用は国によって弁償されることになっています。
いままでに総務大臣の要請による非常通信の例はありません。今後もよほどの国家的危機でもない限りアマチュア局に対して大臣が要請することはないと思われます。よって今後もボランティア精神が基本になるでしょう。


妨害や虚偽の通報は罪が重い
遭難・非常通信の妨害や虚偽の通報は電波法で厳しく処罰されます。特に航空機や船舶の遭難通信に関する妨害や虚偽は最も重い罪となります。
遭難通信を妨害したものは、1年以上の有期懲役に処する(法105条2項)となっています。
また、船舶遭難又は航空機遭難の事実がないのに、無線設備によって遭難通信を発した者は、3月以上10年以下の懲役に処する。(法106条2項)となっています。
電波法違反の多くは、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」となっていますが、遭難通信に関する違反はたいへん重い罪となります。法的にもそれだけ重要な通信と位置付けられているのです。

あとで総合通信局に報告を!
非常通信を行った場合は、その実施状況(日時、周波数、電波形式、通報の発信者名、宛先、通報通数および通報概要など)をすみやかに管轄区域の総合通信局に報告しなければなりません(法80条1項1号)

普段の消防団の連絡はNG
非常事態なら何でも利用できると勘違いしている人も多いようです。それが特に消防団です。

消防団には専用の周波数が割当てられています。しかし消防団専用無線を使用しているのはごく一部の団のようです。

無線設備の操作の特例
アマチュア局の無線設備の操作は免許人(社団局は構成員)でなければなりませんが、遭難・非常通信の場合にそれらの者(無線従事者)を操作にあてることができないときは、特例として他のもの(資格がなくてもよい)が無線設備の操作を行うことができます。
ただし、通信に関する電波法令上の責任はその局の免許人になります
非常通信は正式な免許を受けた無線局に例外的に認められている目的外通信だという認識が必要です。

この特例が最も勘違いされやすいと思います。この特例は免許を受けている無線機の使用が前提です。その無線機の免許人自体が負傷したとか、免許人が他者の救助活動で無線機の操作ができないという場合に、代わりに周囲の者(免許を持っていない)が操作してもよいというものです。

普段からアマチュア業務による交信で無線機の操作方法、交信方法、運用ルール、周波数ごとの電波伝搬の特性、バッテリーの持続時間などを実験・研究しておかないといざという時に十分力を発揮できないことになります。
特に山岳地帯では電波伝搬に関する知識が重要です。山頂からは小出力でも遠くと交信できます。谷間では電波は飛びにくいですが、山の位置関係によっては山岳反射や山岳回析という現象を利用して通信することも可能です。そういった通信距離や電波の飛び方の感覚を身につけることが大切です。

遭難通信と非常通信
遭難通信とは船舶の海難や航空機の重大な危機が発生した時の通信です。登山での非常事態は世間一般では遭難と表現されますが、電波法的には非常通信です。
電信の
遭難信号「SOSは一般の人にも知名度がありますが、非常通信の「OSOは無線家でないと知られていないと思います。遭難通信と非常通信では電波法の取り扱いも異なります。概ね非常通信は通信事項に目的外使用(非常通信)が認められるということ以外は免許状の範囲内での通信が基本です。一方の遭難通信は通信事項はもちろん、周波数・出力・型式などが免許状の範囲を超えても許される最優先の通信です。

しかし非常事態が発生した場合、「遭難通信」か「非常通信」かあるいは総務省令で定める「人命の救助に関し急を要する通信」か?・・・こんな法的根拠を考えていても意味がありません。人命に関る非常事態には違いないわけですから、正確かつ冷静に状況を伝えることが重要です。非常事態か否かは免許人の判断でよいのです。


■非常通信関連法令■