キャブ(VM26)の中低速セッティングのコツ
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作業時間
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必要部品代
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1日〜
(掛かる場合は何日も必要)
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効 果
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必要工具
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エンジン特性の変化やトルクアップなど、セッティングを詰めることで、扱いやすい特性を作ることができます。
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・ソケットレンチセット
・ドライバーセット(プラス、マイナス両方)
・六角レンチセット(キャブによって必要)
・ラジオペンチ(出来ればあった方が便利)
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モンキーやゴリラは世界で広く愛されている、カブ系エンジンを搭載したバイクです。各社から様々な ボアアップキットが販売されているので、初めてボアアップに挑戦される方も多いかと思います。
ボアアップを行うと、それに合わせてキャブレターのセッティングも変更することになるのですが、 経験がない入門者にはとても敷居の高い作業になります。公道でキャブレターの実走セッティングを 行う場合、まず最初に中低速域のセッティングを決めるのが基本です。
ここをしっかり行わないと 走り出してすぐにプラグをカブらせて走行不能になったり、エンジンを壊す原因となります。極端な話 中低速のセッティングがしっかり決まていれば、普通に走る分には、ほとんど問題がありません。
難しい反面それが楽しみでもあるのですが、セッティングがなかなか決まらなくて苦痛になっては 面白くありません。ここでは一般的に扱いやすいと言われる、VM26の中低速セッティングのコツに ついて、長年このキャブを使ってきた私の経験を含めて解説します。
キャブレターのセッティング手順の基本については、「キャブレターセッティング(基本)」や 「キャブレターセッティングの手順(VM26)」を参照してください。
■VM26の違いについて
すでに他のページで色々書いている内容ですが、VM26は販売元のメーカーによって内部パーツの セッティングが異なります。モンキー用として武川とキタコから販売されていますが、メーカーの違いに よって、ジェットニードルとニードルジェットの形状が異なります。その為、初期出荷時のセッティングも 下記のような違いがあります。
| 項 目 |
武川製 |
キタコ製 |
| メインジェット |
190番
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150番
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| パイロットジェット |
22.5番
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15番
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| ジェットニードルの段数 |
上から3段目
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上から2段目
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| ジェットニードル |
5E75
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4J13
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| ニードルジェット |
332#O-0
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249#Q-0
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※一部MAOさんのサイトより転記させていただきました。
武川もキタコも同じメインジェットを使いますが、キタコの方が同じ番号で比べた場合、高回転域の ガスが濃く出ます。それと中間域もキタコの方が濃くなっています。では、どちらのメーカーのキャブを 使った方がいいかですが、これは取り付けられているボアアップキットと同じメーカーに統一される ことをお奨めします。
私のようにメーカーの組み合わせがバラバラだと、どちらがいいとは一概に言えないのですが もし相性が悪い場合、内部パーツを組み替えることで特性を変更することができます。 他の方のセッティングデータを参考にされる場合は、メーカーの違いに注意してください。
■取り付けについて
これも上記のページで書いている内容ですが、VM26はマフラーの排圧特性の影響を 強く受けます。多少高くても名のあるメーカーの製品を選ばないと、後々苦労することがあります。 それとキャブを取り付けるマニホールドには、右だし、左だしがありますが、右だしにすると 干渉する箇所が多いので、左だしをお奨めします。
あと左だしにした場合、ガソリンコックとキャブとの距離が近いので、取り出しの向きが悪いと ガソリンホースが潰れ、高回転でガス欠の症状が出ることがあります。できれば取り出し口が 横向きになっているガソリンコックへ変更して、キャブと接続するガソリンホースの長さを 短くすると安心です。(↓写真)

私の取り付け状態です。キタコのPWK用のマニホールドに武川のVM26のインシュレータという 特殊な組み合わせですが、最初108mmの長さのホースで接続しているとホースが折れて潰れて しまったので、現在83mmまでホースを切り詰めて使っています。
■VM26のセッティング手順
最初はメーカー出荷時の状態からセッティングを開始するのが基本ですが、武川のVM26の場合 最初に付属しているパイロットジェットが大きすぎます。これは安全マージンの為だと思われるので #22.5番→#17.5番へ変更を行ってください。キタコの場合は、#15番のままで大丈夫です。
VM26の場合、よほどのことがなければ、この状態で普通にエンジンが掛かります。よくセッティング は暖機が終わった状態から始めるように言われますが、冷間時の状態も大切な判断材料です。 まだ暖まっていない状態で軽くアクセルをあおり(1/4回転ぐらい)、暖まるにつれて低〜中間域の 回転上昇がどのように変化するか様子を見ます。
キャブの場合、エンジンが暖まるについれて気化したガソリンが少しずつ濃くなっていきます。 最初は少し薄めの状態から始まり、エンジンが暖まるにつれて調子が良くなっていくのが理想です。
エンジン始動直後から滑らかに回転が上昇する場合は、低速域が濃すぎる状態です。この場合 エアスクリューを左に回し、ガスが薄くなる方向に調整を行います。それでも調整しきれない場合は パイロットジェットを交換したり、ニードルの高さを調整することになります。
キャブセッティングを詰める上で、エンジンが暖機するまでの変化を観察するのは、中間域までの セッティングには有効です。よくガスを濃くする方法として、チョークを少し引いたり、キャブレターの 吸気口を半分ふさぐように言われますが、この方法は慣れないと判断が難しいです。 濃いか、薄いか判断に迷ったときは、冷間時の状態を見る方法を思い出してください。
ただし、このやり方には欠点があって、エンジンが冷えるのを待っていると、一日に何度も 試すことができません。じっくりセッティングに時間を掛けられる方でないと難しいかもしれません。
エンジンの暖機が終わったらアイドリングの調整を行います。詳細は「キャブレターセッティングの 手順(VM26)」で解説している内容ですので、ここでは省略させて頂きます。アイドリングの調整が 終わったら、アクセルグリップに付けた印を目印にして、ギヤはニュートラルのまま、じわ〜と アクセル開度1/2回転ぐらいまで開けていきます。アクセルを開けていく途中で1万回転まで達したら そこで止めます。このときタコメーターの針の上がり方を見ながらセッティングを確認するわけですが、 とくにアクセル開度1/4〜2/5付近の変化に注目してください。
ガスが「濃いか」、「薄いか」の判断ですが、ハッキリ言って最初は分からない思います。ある程度 経験を積めば、アクセル開度に対する音や回転上昇の変化で分かるようになるのですが、 コレばかりは経験です。
よくプラグの焼け色を見れば分かると言われますが、これはセッティングがほぼ決まっている 場合のみ有効です。プラグの焼け色というのは、アクセル全開域の燃焼状態を見るには いいのですが、中低速では焼き色が付くのに時間が掛かります。それに公道では同じアクセル開度を 維持することもできないので、あまり意味がありません
。とくに空ぶかしで違和感がある状態だと 正しい判断はできません。セッティングの判断の基準ですが、文章での説明は難しいので 参考に動画を用意しました。
正しいセッティングが出ている場合(ニードルの段数:上から4段目)size 0.91MB
中間域のガスが薄い場合(ニードルの段数:上から3段目)size 1.18MB
中間域のガスが濃い場合(ニードルの段数:上から5段目)size 1.03MB
※ファイルをダウンロードしてから再生してください。
サーバー負荷の問題もあるので、あまり大きな動画は置けないのですが、感じとしては お分かり頂けたでしょうか?
一般的にガスが薄い場合は息継ぎを起こすと言われますが、空ぶかしの状態だと負荷が少ないので、 よほどガスが薄くないとハッキリした症状は出ません。上の動画だと3000回転と、6000〜7000回転付近で わずかに回転が乱れています。ガスが薄い場合の判断方法ですが、まず軽い感じの音がするのと セッティングが出ている場合と比べて、大きめにアクセルを開けるようになります。
逆にガスが濃い場合ですが、上の動画では8000〜9000回転付近でタコメーターの針が乱れて 頭打ちになり、それ以上回転が上がらなくなっています。ガスが濃い場合の症状としては 理想的な動画ですが、なかなかこんなに分かりやすい症状はでません。電気式のタコメーターの場合 ガスが濃すぎても、薄すぎても失火して針が乱れます。
判断のポイントですが、まず重たい感じの音が することと、同じ回転数まで回すのに必要なアクセル開度が少なくなります。
上記のような症状が出た場合は、ニードルのクリップ位置を変更して調整を行います。 ガスが濃い場合は、クリップの位置を一段上げ、薄い場合は逆に下げます。武川製のVM26を 使っていて、中間域を決めるとその前後が濃くなるような場合は、キタコのインナーパーツに 組み替えることで解決することもあります。私は両方のインナーパーツを使ってみましたが、 特性は武川の方が素直だと思います。武川製のVM26の場合、ニードルクリップの位置は 初期出荷の上から3段目から、あまり動かさないほうがいいようです。
それとニードルを動かすことで低速域のレスポンが悪くなる場合は、パイロットジェットを変更する ことで多少調整できます。ほとんどの場合、#15〜#20の範囲で収まるはずです。VM26は セッティングの緩いキャブなので、ある程度幅を持たせた緩いセッティングが向いていると思います。
私のエンジンは、武川のインナーパーツを使いにニードルクリップの位置を上から4段目に 設定していますが、同じセッティングの方は少ないと思います。これは私の推測なのですが VM26は負圧の強さ、特にボアサイズによってセッティングが大きく変化しているように思います。
よく雑誌や他の方のセッティングデータを見ていると、106ccと88ccのセッティングは、ほとんど 同じになっています。基本的に排気量が大きくなると、エンジンの負圧も増えるのですが VM26の場合、エンジンからの負圧が増えるに従って、自然にガスも濃くなっているようです。
私のエンジンのボアサイズはφ49.6mmという特殊なサイズなのですが、一般的な88ccの ピストン(φ52mm)と比べると一回り小さくなります。当然負圧も小さくなるので、その分 濃いめのセッティングが必要になっていると考えています。
エンジン周りを全て武川製で固めた場合、106ccの推奨セッティングがMJ#180番、ニードルが 上から3段目、PJ#17.5番ですが、私の96ccの場合だとMJ#190番、ニードル上から4段目、PJ#20番 となります。この考え方でいくと124ccのキットだと、さらにMJの番号が下がりそうですが、この場合は 逆に上がりMJ#190〜195番ぐらいになるようです。もしかしたら106cc以上は、バルブサイズの影響などで 一定以上負圧が変化しないのかもしれません。
とまぁ、長々と書いたわけですが、空ぶかしで中間域のセッティングがある程度決まったら 実走セッティングに入ります。ここまでくれば普通に走る分には問題がないハズです。 じっくりと時間を掛けてメインジェットの詰めを行ってください。
セッティングのコツについてあまり細かく書いてしまうと、逆に判断を迷わせる原因になるかもしれない と思ったのですが、私は中途半端に物事を説明するのが嫌いなので、あえて詳しく書きました。 これでもまだ書き入れていないこともありますが、あとは実際に試して経験を積んでください。
ぶっちゃけ、キャブセッティングなんてものは経験です。私が書いていることを全部うのみに するのではなく、「本当にこの通りになるのか?」と疑ってもらった方がいい勉強になると思います。 色々実験して迷ったら、ここに書いてある内容を思い出して頂ければ幸いです。
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